2025年11月6日木曜日

 【臨床画像2025年増刊 感染症の画像診断】


髄膜炎

・細菌性髄膜炎:免疫能が比較的発達していない小児や高齢者に。肺炎球菌に治療中に脳梗塞を合併することが知れられている

・ウイルス性髄膜炎:多くの場合画像所見を認めない

・亜急性髄膜炎は1-2週で受診が多く、結核性真菌性など。

脳症

・多くはウイルス性脳炎による、脳実質の炎症。

・臨床や画像所見から、限局性脳炎型(辺縁系脳炎など)、全脳炎型、多巣性脳炎型などがある。脳症の型として、MRES(一過性脳梁膨大部病変)とAESD(痙攣重積)が多い。

・亜急性期-慢性脳炎は、神経梅毒、遅発性ウイルス感染症、プリオン病など。全脳炎型としては亜急性硬化性脳炎、多巣型としてはトキソプラズマ脳炎や進行性多巣性白質脳症など。


肺MAC症

・NTMは200種以上同定されているが、90%がMycobacterium avium complex。

・結節気管支拡張型 nodular bronchiectatic formは多くで認め、中肺野の末梢肺の小結節粒状影と気管支拡張。

 NB型でも空洞形成があると治療抵抗性であり「有空洞NB型/cavitayr NB form」という。

 線維空洞型 fibrocarvitary formは、結核症類似の肺尖や上葉の空洞が主体。結核に比べて、空洞壁が比較的薄く、周囲の気道散布性病巣や浸出性変化が乏しく、空洞に開口する拡張気管支を認めることが多い。


非典型MAC症

・免疫低下(生物学的製剤、HIV陽性、抗INFγ抗体陽性)、肺の基礎疾患(先天性肺気道奇形や線毛機能不全、後天的異常)、健常者にみられる非典型像(孤立性肺結節や過敏性肺炎型/hot tub lung)がある。


アスペルギルス症

・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)、慢性肺アスペルギルス症(CPA)がある。

 慢性肺アスペルギルスは、単純性肺アスペルギローマ(SPA)、慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA)分けられる。

 慢性進行性肺アスペルギルス症は慢性空洞性肺アスペルギルス症(CCPA)と慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA)に分けられるが、区別は難しい。また、NTMとの合併がある。


・一般的画像所見としては、

 単純性肺アスペルギローマは、単一空洞内に菌球形成。

 慢性空洞性肺アスペルギルス症は、多発性、進行性の空洞拡大、空洞周囲の浸潤影。

 慢性壊死性肺アスペルギルス症は、進行性の空洞、浸潤影、空洞内菌球、など。侵襲性肺アスペルギルス同様に、組織侵襲性あり。


・肺カンジダ症と侵襲性肺アスペルギルスIPAの比較では、両者とも結節が主要な所見であすが、小葉中心性陰影はIPAで頻度が高く、ランダム分布は肺カンジダ症で半数(IPAでは4%と低い)。カンジダ血症での結節影でも30%でCT halo signがみられるとされる。

 

肺ムーコル症

・標準抗真菌薬のボリコナゾールが効かない

・reversed CT signが強く示唆するCT所見(19-95%、早期に出現)

 好中球減少患者では、すりガラス影、CT halo sign、reversed CT signが多いとされる

 


Lugwid angina (Ludwigはラートヴィヒ)

・膿瘍形成を伴わない急速に進行する口腔底蜂窩織炎で、顎下間隙,舌下間隙,オトガイ下に炎症が急速に波及する病態。

・救急疾患で、発症から診断まで平均3-4日と短い。

・組織間隙を通じて、髄膜炎,縦隔炎,膿胸などを合併しうる。

・約90%が口腔感染が原因。


Bezold膿瘍/Bezold’s abscess

・乳様突起から下内側方向に炎症が波及し、胸鎖乳突筋の深部に膿瘍が形成する

・乳突蜂巣内の炎症が骨を破壊し、骨膜下-筋間隙に穿破する

・成人で乳突蜂巣の含気が発達し、皮質骨が菲薄な場合に生じやすいが、小児例もある。

・中耳炎由来の頚部膿瘍は、Citelli膿瘍(顎下三角)、Luc膿瘍(側頭筋下)がある。


膿胸関連リンパ腫pyothorax-associated lyomphoma

・PALはびまん性大細胞型Bリンパ腫が多い

・慢性炎症やEBVとの関連が疑われている

・他に扁平上皮癌、胸膜中皮腫、肉腫など


右側結腸炎

・カンピロバクター:鳥チャーシューが最近では。15%で血便。ギランバレー症候群、感染後過敏性腸症候群、反応性関節炎などさまざまな合併症あり。

・サルモネラ:鶏卵感染が知られる。高熱を伴うなど、症状が強く、重症例は血便。治療後も長期に菌検出される場合は、胆石保有などによる胆嚢内保菌も。

・エルシニア:加熱不十分な肉、井戸水、げっ歯類など。0-4℃の冷蔵庫でも増殖する。消化管穿孔や腸閉塞を合併したり、反応性関節炎や川崎病様症状を伴うことも。

・下痢原性大腸菌感染症:腸管出血性大腸炎enterohemorrhagic Escherichia coli(EHEC)が重要。HUS合併が1-5%に。

・アメーバ性:輸入感染症や男性同性愛者に

・Cloctridium difficile(CD)感染症:偽膜性腸炎

・抗菌薬起因性出血性大腸炎:比較的健康な若年者に多い。ペニシリンやセフェム薬投与後数日で、水溶性下痢,腹痛,血便など。

・Klebsiella oxytoca:ピロリ菌除去後/上部内視鏡後、歯科治療後がキーワード。

・サイトメガロウイルス腸炎:造血幹細胞移植後、AIDS、ステロイド、抗がん剤などの基礎疾患を背景とする。結腸にも小腸にも。UC,GVHD,薬剤性腸炎など鑑別。



急性巣状細菌性腎炎acute focal becterial nephritis:AFBN

・腎実質局所感染による液状化を伴う腫瘤性病変。

・急性腎盂腎炎よりも膿尿や尿培養陽性率が低い。

・腎膿瘍はT2WI高信号に対して、低信号を呈する。

・鑑別は間質性腎炎(≒尿細管病変と合わせて尿細管間質性腎炎)。こちらは薬剤性が最多で、免疫異常、代謝異常、感染症など。小児では、NSAIDSやメサラジンによる報告。


黄色肉芽腫性腎盂腎炎

・腎実質が破壊され、病理学に脂肪を貪食したマクロファージで置換される

・腎盂腎炎の0.6%ほど。

・肉芽が全体のびまん型(8割)と、腎杯周囲に限局の限局型がある。

・中高年女性に好発。基礎疾患として、糖尿病、尿路結石/サンゴ状結石、尿管狭窄。

・CT典型像では腎全体が腫大し、サンゴ状結石を伴う。髄質中心の低吸収域が多発し、造影後も低吸収内には造影効果を認めず、辺縁にrim状造影効果が見られることがある。

 限局型では乏血性腎細胞癌と鑑別が難しいことも。

 周囲構造と瘻孔を形成することも。


腎尿路結核

・血行性感染。

・初期は血流の多い糸球体に感染巣を形成し、無症状のことも。

 炎症再燃すると、髄質や乳頭部に進展し、肉芽腫が癒合,乾酪壊死を起こし、炎症,線維化による腎杯拡張を来す。

 さらに進行すると、尿中に結核菌が排出され、尿管の感染-狭窄をきたす。

・腎結核があっても肺結核確認できるのは、26-75%と低い。


膀胱炎

・腎移植や同種造血幹細胞移植後では、出血性膀胱炎。アデノウイルスやBKウイルスの再活化による。


Alkaline-encrusted pyelitis and cystitisアルカリ性痂皮性膀胱炎および腎盂腎炎

・主要起因菌はCorynebacterium urealyticumの慢性感染症。

・尿素分解酵素をもち、尿路をアンモニアに分解し、尿pHをアルカリ化にされ、リン酸Caやリン酸Mgが析出する。尿路壁に付着し結晶化、石灰化、炎症を引き起こす。

・背景として、腎移植後などの免疫抑制状態や尿路操作後がある。


PID 結核

・性器結核や結核性腹膜炎はほとんどが続発性/二次感染

・結核性腹膜炎は①被包化/遊離した大量腹水を伴うwet type(90%)➁大きな大網ケーキと腸管の癒着集簇を主とするfibrotic type(60%)③乾酪壊死を伴うリンパ節腫大と腸管周囲の線維化を主とするdry plastic type(10%)に分類される。

・女性生殖器結核は卵管が最多で両側性がほとんど。次いで子宮内膜。

 卵管結核は卵巣に進展し卵管卵巣膿瘍を形成したり、下行性に子宮結核併発が多い。

・卵管結核の画像は、卵管の不規則な拡張,壁肥厚,液体貯留。卵管壁や膿瘍壁がT2WI低信号を示す。


PID 放線菌症

・Actinomycesによる慢性肉芽腫性感染症で、多発膿瘍、肉芽痙性、線維化を起こす。

・IUD調基挿入がリスクファクター。

・蛋白分解酵素を産出するため、腹膜や筋膜を超えて進展する。

・サイズが大きいのに、(悪性としては)リンパ節腫大に乏しく、IUD挿入があるときに積極的に鑑別に。

・MRIでは充実部分が線維成分を反映しT2WI低信号を示す。

 【臨床画像2025年増刊 感染症の画像診断】 髄膜炎 ・細菌性髄膜炎:免疫能が比較的発達していない小児や高齢者に。肺炎球菌に治療中に脳梗塞を合併することが知れられている ・ウイルス性髄膜炎:多くの場合画像所見を認めない ・亜急性髄膜炎は1-2週で受診が多く、結核性真菌性など。 ...