2024年12月31日火曜日

 「症例から学ぶ産婦人科疾患の画像診断」子宮体部扁


・子宮筋腫のヒアリン変性はT1WI低信号。富細胞性は早期から濃染。赤色変性は突然の静脈閉塞による。

・子宮腺筋症は、junctional zoneの拡大あり。T2WI高信号は、異所性子宮内膜腺およびその拡張、出血に相当。腺組織から内膜癌が発生しうる。

 嚢胞性腺筋症はT2WI低信号rimに囲まれる。この嚢胞壁に癌が発生すると、卵巣腫瘍のような壁在結節を呈する。


・子宮内膜増殖症は、閉経前後で過剰なエストロゲン刺激による非腫瘍性変化。子宮内膜異型増殖症は50代前半に多く、類内膜癌への移行もしくは合併(25-40%)が多い。これら増殖症のリスク因子は肥満,PCOS,糖尿病など。

・内膜ポリープは良性の子宮内膜腺と間質の増生。

 タモキシフェン投与で、嚢胞性萎縮と内膜ポリープ。


・子宮体癌の80%は類内膜癌。

 子宮体癌I型はエストロゲン依存性で、比較的若年者。高分化型-中分化型の類内膜癌(G1-G2)が大半。内膜増殖性を経て発生すると考えられている。

 II型はエストロゲン非依存性。比較的高齢者。漿液性癌、明細胞癌など、I型よりも予後不良。


・体癌の筋層浸潤は、junctional zoneとsubendometrial enhancement(SEE)をみる。

SEEと紛らわしい所見としてPTE(peritumoral enhancement)があり、腫瘍周囲に認める造影効果。PTEは体癌の半数程度に認め、腫瘍の筋層付着部の血管増生を反映や、腫瘍先進部の炎症細胞浸潤を伴う間質反応の血管増生を反映と考えられている。

・子宮体癌の5-8%に原発性卵巣癌を合併(必ずしも転移ではない)


・子宮体部漿液性癌は、腫瘍細胞が乳頭状-管状構造を呈する高悪性度腺癌。筋層浸潤が軽度でも腹膜播種をみとめることがある。播種には砂状体の石灰化を認めることも。

 前駆/初期病変は漿液性子宮内膜上皮内癌(serous endometrial intraepithelial ca.:SEIC)


・子宮癌肉腫は、典型には内子宮口より頚管内に突出する腫瘤。出血や造影不良も。

 高異型度の癌腫成分(類内膜型が多いが漿液性,明細胞性,扁平上皮なども)と、肉腫成分(内膜間質,平滑筋,横紋筋,骨,軟骨など多彩な間質成分)の増生からなる。

 閉経後に多く、予後不良。


・異型ポリープ状腺筋腫(atypical polypoid adenomyoma:APA)

 子宮体部下部に好発。異型のある子宮内膜型腺上皮が複雑な腺管をなして線維筋性間質を伴うポリープ状腫瘤。子宮内膜癌合併割合は10%(内膜ポリープのそれは1%)と高リスク。

・子宮体癌はLynch症候群に関連

2024年12月25日水曜日

 画像診断 2024.11


・脳出血は、重度貧血や活動性出血部位など十分な凝血槐形成がないど、高吸収とならないことがある。


・脳動脈瘤の分類

 1)嚢状動脈瘤 動脈瘤の90%を占め、90%が前方循環系。血行力学的負荷が大きい分岐部に。多発もする。

 2)仮性動脈瘤 動脈壁が破綻し周囲組織に囲まれて瘤状に。小児頻度が高い。外傷、感染症、薬物乱用、腫瘍、医原性などが原因に。

 3)血豆状動脈瘤 薄く脆弱な動脈壁の小さな半球状/広基性の突出。動脈瘤の1%程度であるが、多くは破裂。CTA/MRAで指摘できず、血管造影で初めて発見されることも。

 4)紡錘状動脈瘤 動脈壁全周が紡錘状に拡張。後方循環系に多い。原因は解離が最多で、動脈硬化、結合組織疾患、感染、稀に腫瘍性など。


・脳動脈瘤周囲浮腫(perianeyurysmal edema:PAE)

 脳動脈瘤に接する脳実質に血管性浮腫。コイル塞栓術後や巨大動脈瘤、部分的血栓化動脈瘤で頻度が高い


・頭蓋内動脈狭窄

 (白人が頭蓋外動脈狭窄が多いのに対して)アジア人で多い。動脈硬化が最多で、動脈解離、モヤモヤ病、炎症/感染/血管炎、線維筋性異形成、先天性疾患などが原因で。



・モヤモヤ病の経過観察

 新規血管障害(梗塞、出血)、白質病変の変化、主病態である血管狭窄の進行(末梢分枝の不明瞭化などもみる)、脳動脈瘤の検索/フォロー、術後であれば術部位の変化


・dVAFの経過観察

 どのような発症形態や経過で起こっているか(初回発症が出血の場合、再出血を来しやすい)、皮質静脈逆流の程度確認。

 画像評価で改善する前に症状が変動(改善/増悪)しうる。特に海綿静脈洞部のTAE後/自然経過にて血栓化が進むと、視力低下、結膜充血などの症状が一次的に悪化する(paradoxical worsening)。頭蓋内の静脈性高血圧が解除されると、上眼静脈拡張が軽減することもある。(上眼静脈は弁がなく直接的に海綿状静脈洞/頭蓋内の脳脊髄液/頭蓋内圧の影響を受けやすいため。)


・AVMの経過観察

 フォローは造影MRAがよいかも。小児患者では切除後再発リスクが成人よりも高い。


・脳実質内腫瘍術後 時間経過とともに術後変化(特に断端造影効果)が出てくるので、術後48時間以内に造影MRIが望ましい。腫瘍摘出縁に限局したDWI高信号がしばしばみられるが、術後性変化の範囲内。
・脳腫瘍治療後の注意
 (1)放射線壊死 3か月-2年。造影される病変内に造影されない壊死が多発する。造影T1WI増強に比して、T2WI高信号領域が小さいことが知られている。
 (2)pseudoprogression 悪性グリオーマのテモゾロミドや、免疫チェックポイント阻害剤の使用で。直ちに増悪を再発としない。
 (3)pseudoresponse ベバシズマブにて異常な透過性を示す血管を正常化するため画像所見が見かけ上改善して見える

・脳実質外腫瘍の再発フォロー もとの腫瘍の性状により、石灰化やDWIもよく確認する。

・造影効果の乏しい癌性髄膜炎 FLAIRや脳室拡大にも注意

2024年12月2日月曜日

 頚部の神経鞘腫


・頭蓋内の傍突起神経膠細胞は、頭蓋外で神経鞘であるSchwann細胞に移行するが、このSchwann細胞から発生。そのため、頭蓋内外の移行部~末梢神経に発生。

 なお、神経線維腫はシュワン細胞のみならず、神経周膜細胞や線維芽細胞に類似した細胞がいりまじった腫瘍

・神経鞘腫基本は、(嗅神経と視神経以外の)由来神経に沿った境界明瞭な腫瘤。

・紡錐形細胞が密に配列するAntoni A型、粘液腫瘍間質を主体のAntoni B型がさまざまな割合で混在。(Target signの成因)

増大は緩徐。

・大きくなると嚢胞変性,出血,石灰化。陳旧性神経鞘腫(ancient schwannoma)と呼ばれる。



・内耳神経以外では迷走神経由来が多い。舌咽神経、副神経、舌下神経、腕神経叢、頚神経叢、交感神経など。

 Pit fallとして前頭蓋底や大脳鎌、小脳テント、トルコ鞍部の報告も。

・頭蓋底から:脳神経から発生すると圧排性の骨びらんとともに神経管/神経走行部位が拡大。(鑑別は脊索腫、髄膜腫、傍神経節腫、転移、軟骨腫/軟骨肉腫)

 ①まずは骨や他由来か、神経孔拡大がみる。

 ②神経孔拡大の鑑別としての髄膜腫は、連続して硬膜のdural tail sign が特徴的。(ダンベル状は両者ともに)


・傍神経節腫は、不整形の虫食い状骨破壊、内部腫瘍血管のsalt and pepper appearanceが特徴的。



頚動脈鞘の神経鞘腫


・頸動脈動脈鞘:腫瘍と総頸動脈,内頸静脈の位置関係から由来神経を同定できる。(鑑別はリンパ節由来)

①迷走神経由来:総頸動脈内頚静脈の間からで、総頸動脈を前内側,内頸静脈を後外側に偏位され、動静脈を離開させる。

②交感神経幹由来:総頸動脈内頸静脈の後内側を走行し、動静脈を外側に偏位させる。

③頚動脈小体由来:内頸動脈と外頸静脈を離開させる。


参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/65/3/65_122/_article/-char/ja/



頚静脈孔の神経鞘腫


・舌咽神経、迷走神経、副神経由来。頚静脈棘より腹側(pars nervosa)は舌咽神経由来、背側(pars vascularis)は迷走/副神経由来とされるが、判断が難しいことも。

 結晶沈着症

「ステップアップのための骨軟部画像診断より」


①痛風

・40歳以上、男性

・高尿酸結晶。

・急性の強烈な関節痛、腫脹、四肢末梢の皮膚結節

・足(特に母指中足趾間関節)、膝、手、肘

・関節周囲の腫瘤と骨侵食像


・原則として後期まで骨粗鬆化や関節腔狭小化が生じにくい


②ピロリン酸カルシウム(CPPD)沈着症

・中高齢者、性差なし

・無症状~急性の疼痛

・膝(特に半月板)、手(特に三角線維軟骨)、恥骨結合、軸椎歯突起周囲

・関節軟骨や関節周囲の石灰化


・軟骨石灰化を来すことが多く、軟骨石灰化症ともいい、偽痛風、結節性偽痛風、CPPD結晶関節症とある。

・偽痛風:軟骨内のCPPDが関節腔に流入し、痛風に似た症状となる

・結節性偽痛風:関節周囲に腫瘤状の石灰化

 (鑑別は慢性結節性痛風、特発性腫瘤状石灰化症、長期透析での石灰化、軟部組織腫瘍)

・CPPD結晶関節症:変形性関節症と似るが、非荷重部にも生じやすく、骨棘の頻度が低い。破壊が高度だと、Charcot関節に似ることも


③ハイドロキシアパタイト(HA)沈着症

・中高齢者、性差なし

・急性発作性疼痛、数週-数か月で自然寛解

・肩(特に棘状筋腱)、股関節(大殿筋、大腿直筋)、頚長筋

・腱や滑液包の部位に一致した塊状の石灰化


・石灰沈着性腱炎、石灰沈着性滑液包炎、石灰沈着性関節周囲炎。

・HAは近年、塩基性リン酸カルシウム(BCP)結晶沈着症の名称推奨

 (BCPは特発性腫瘤状石灰化症、長期透析の石灰化、進行性全身性硬化症や皮膚筋炎の石灰化にも含まれている)

 

画像診断 2025.7 (呼吸器特集)からメモ ・Degloving injury:大腿直筋の羽状筋成分が内外に分離するような損傷 ・PSA再発/生化学的再発:根治的全摘後では持続的に0.2ng/ml以上、根治的RT後は最低値から2.0以上の上昇で ・肺癌:臓側胸膜浸潤T2、壁側...